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太陽光パネルの研究・開発
2023.7.31
太陽光発電で最も重要な物と言えば、太陽光パネルです。
太陽光パネルを使った「夜間発電」や、研究・開発が進む太陽光発電の「進化系パネル」の
数々について、前編・後編の2回に分けてご紹介します。
◇もくじ
-1. 太陽光発電とは
-2. 既存の太陽光発電の課題
-1. スタンフォード大学の研究
-2. オーストラリアの研究
3. まとめ
公共施設や住宅屋根、遊休地など様々な場所で設置されている太陽光発電。
国内での導入は企業・個人ともに着実に伸びており、広く普及してきています。
ただ一方で、「夜間は発電できない」「設置場所に限りがある」といった課題もあります。
そんな中で近年、太陽光発電が更なる普及に向けて、新たな進化を遂げつつあります。
どのような新技術の研究・開発が進んでいるのでしょうか。
-1.太陽光発電とは、シリコン半導体などを用いて、太陽の光エネルギーを太陽電池によって
電気に変換する発電方法です。「エネルギー源=太陽光」なので、通常利用しない屋根や
壁といった日光のあたるスペースを活用できるというメリットがあります。
一方で課題も山積です。
①時間帯により発電量が左右される。
同じ太陽光パネルでも、日照時間の長さによって発電量は変化します。夜間には太陽の
光エネルギーが得られず、発電施設を稼働させることができません。太陽が出ている
時間は発電していますが、それ以外の時間帯は発電していません。
②気温により発電効率が変化する。
一般的に太陽光パネルは高温に弱いとされ、結晶系の太陽光パネルは1℃上昇で発電効率が
0.4%低下してしまいます。
③気象条件により発電量が左右される。
晴れの日が続きやすく気温が10℃から20℃の3月~5月は発電量が高くなる時期ですが、
晴れの日に比べて曇りの日は発電量が50%ほどに低下してしまうため、梅雨の時期は
発電量が減少すると言われています。
④季節により発電量が左右される。
冬は春や夏場より日照時間が短いため発電量が減少します。
⑤諸外国との比較
1kW当たりのシステム価格は年々低下していますが、国内における太陽光発電のシステム
費用は諸外国と比較すると高く、今後更なるコスト低減が求められています.
一方で、太陽光発電の発電効率は15%程度に留まり、火力発電の発電効率の半分以下の数字
となっています。前述でも書いているように発電量当たりのコスト低減を求められている今、
発電効率の向上を目指していくべきです。
発電設備の有効活用やコスト、発電効率など様々な課題がある既存の太陽光発電ですが、
近年、課題の解決に向けて様々な新技術の研究・開発が進んでいます。
-1.スタンフォード大学の研究者は、2022年4月に、市販のソーラーパネルに改良を加え、
夜間の発電に成功したと発表しました。物体が夜間に空を向いていると、宇宙空間に
熱を放射するため、気温と物体に温度差が生まれます。
この放射冷却の性質を利用してエネルギーを作り出すことによって、発電を行うことに
成功しました。(図1)
-2.オーストラリアの研究チームも、放射冷却を利用した夜間発電と同様の原理で、
地球から宇宙に放たれる地表の熱を利用した夜間ソーラー技術の実験に成功したと
発表しています。地表の熱は夜間に赤外線の形で宇宙に向けて放出されます。
この研究では、発電出力はソーラー発電の10万分の1と弱い規模に留まり、発電効率
も低いとされていますが、半導体素子を改善することで将来的にはソーラー発電の
10分の1ほどにまで出力を高めることができると期待されています。(図2)
上記のように各国各機関の研究で改良したパネルの夜間の発電量は現段階では少量ですが、
夜間の照明や機器の充電、センサーなど低出力密度の用途には有効とされ、夜間に必要な
電力を一定程度賄うことができると期待されています。
現在、太陽光発電の新たな展開として、夜間発電などの研究・開発が各国で進んでいます。
これらの新技術は既に実用化されているものもあります。
次回、後編では反射光を利用した両面発電等について紹介します。